「あ…ここ……」


由佳はその景色を見て、呟いた。


「そう。前に1回お前と来たことある。」


由佳はこの景色を覚えていた。

それはもう半年以上前の、あの日だ。

まだ人間なんてくだらない生き物だと思っていた夏の日、薫が連れてきてくれた場所だ。

ここから見える花火があまりに綺麗で感動したことを、今でもはっきりと由佳は覚えていた。


「ここ、昔俺が喧嘩した後とか、1人になりたかった時とか、よく来てたんだよ。お気に入りスポット。」

「……。」

「ほら、綺麗だろ。」


薫は河川敷に腰掛けると、満足そうな顔をして夕日を眺めながらそう言った。


「…あの時、小野寺薫から全然連絡なくて、すごいムカついてた。」


由佳は薫の隣に腰掛けながら、そう呟いた。


「俺も、お前がここで寝ながら寝言であの金髪男の名前を呼ぶから、すげームカついたわ。」

「え、そうだったの?」

「あぁ。恭ちゃんって誰だよって思った。」

「あはは」


由佳はあの日のことを思い出し、思わず笑みがこぼれた。