―――…。
「……グスン。」
ジェットコースターを乗り終えた由佳は、涙を流しながら鼻をすすっていた。
そんな由佳の横で、薫は楽しそうにケタケタと笑っている。
「苦手ならはっきり苦手だって言えばいいのに、強がるからこうなるんだよ。」
隣で泣きながら不貞腐れている由佳を見ながら、薫は意地悪そうにそう言った。
「それにしても、ジェットコースターに乗ってる時のお前の顔、ほんと最高。この世の終わりみたいだったぞ。」
「…うるさい!」
腹を抱えながらケタケタ笑う薫に、由佳は怒ったように言い返した。
だが由佳は少し嬉しかった。
薫がこんなにも笑ってくれている。
きっと楽しんでくれているのだ。
そう考えると、耐え難い恐怖ではあったが、ジェットコースターに乗って良かったのかもしれないと由佳は思った。
「次は絶叫系じゃないやつに乗るから!」
そう言って由佳が薫の腕を引いて歩き出そうとした時、由佳は視界が揺れるのを感じた。
由佳が「あっ」と思った時にはもう目の前の視界が霞み、そして全身の力が抜けた。
―― おい、笠原!
薫がそう叫ぶ声が、どこか遠くで聞こえたような気がした。