「ねぇ、小野寺薫って甘いもの嫌いだよね?」


由佳は隣を自転車を押しながら歩く薫に恐る恐る尋ねる。

すると薫はズバッと言い放つ。


「あぁ、吐き気がする。」


由佳は「だよね…」と苦笑いをすると、再びそれとなく薫に尋ねる。


「もうすぐバレンタインだけどさ…ああいうのってどう思う?」

「吐き気がする。」


再びそう言い放った薫に、由佳は黙って苦笑いするしかなかった。


そうだ、こいつはこういう奴だった――…。


薫は由佳以上に冷めたところがある。
そんなイベントなんて興味がないのは目に見えていた。


やっぱり手作りチョコなんて、あげるだけ無駄だよな――…。


由佳は心の中で呟いた。