38階に辿り着くと、コンシェルジュは言う。
「こちらのフロア一体小野寺様のお住まいになっておりますので、あちらの扉からどうぞ。」
そう言ってコンシェルジュは由佳に一礼をすると、その場から去っていった。
由佳は驚きのあまり言葉が出てこなかった。
この最上階のフロア全てが、薫の住まいだと言うのだ。
しかも、薫は1人暮らしだと前に言っていた。
一体あいつ、何者――?
由佳は理解が出来なかった。
特に薫は普段お金持ちオーラを発しているわけでもなかったので、由佳にとってはかなりの衝撃だった。
ごく普通の高校生だとばかり思っていたが、どうやらそういう訳ではなさそうだ。
由佳は呆然としながら、目の前の扉のベルを鳴らす。
「開いてる。」
ドアの向こうでそう言う薫の声が聞こえた。
由佳は恐る恐る扉を開けると、中に入った。
「お邪魔します…」