由佳が不安げな顔をしていると、松本先生は何かを思い出したように言う。
「そう言えば薫、今日風邪で学校休んでるんだって?」
「はい、そうみたいです。」
由佳は頷く。
「さっき連絡してみたら、相当つらそうだったよ。だいぶ熱があるみたいだね。」
「そうなんですか。休むとしか聞いてなくて…」
すると松本先生は、何か閃いたような顔をして、由佳に小さな紙袋を手渡した。
「これ、薫がこの前家に来た時にマフラーを忘れて行ったんだよね。今日渡そうと思ってたんだけど。」
「…はぁ。」
「それで由佳ちゃん…これ、薫の家まで届けてくれないかな?」
「え…私が?」
由佳が驚いて聞き返すと、松本先生は頷いた。
「ついでに、薫の看病でもしてあげたら?」
「え…」
「薫、きっと喜ぶと思うよ。」
松本先生はそう言うと、ニッコリと微笑んだ。