――…。


由佳と和也は例の非常階段の踊り場に来ていた。


「なーんだ、そういうことか。」


和也は由佳から昨日の件についての一連の流れを説明されると、笑いながらそう言った。


「だから、皆には桐島にチョコを渡したってこと黙っててほしいの。」


由佳がそう言うと、和也は「別にいいよ。」と快く承諾してくれた。

由佳はそれを聞いて、ホッと安堵のため息をつく。


「まぁ奈津子や木村と、お前を比べるのはちょっと酷だよなぁ。」


和也は踊り場に腰掛けながら笑った。


「あいつらは結構直球勝負なとこあんじゃん?でもお前はどっちかというと気持ちを口にするのが苦手なタイプだろ。そう簡単に行かないのも分かるよ。」


和也の言葉に、由佳は感極まった。

彼の言葉は、ズタズタに切り裂かれた由佳の心を癒やしていくようだった。


「私、そういうこと言ってくれる人が欲しかった…」


由佳は呟いた。