――…。


「おっす。」


次の日、由佳が玄関の扉を開けると、いつも通り薫がそこに立っていた。


「…おはよう。」


由佳は薫にどんな顔をすれば良いのか分からなかった。

昨日あんな告白現場を見てしまったことと、そして和也にチョコを渡すところを見られてしまったことが主な原因である。


だが薫は不思議なことに、至って普通だ。


昨日の一件で、薫も少しはいつもと違った様子を見せるのかと思いきや、不機嫌な素振りも見せず、そして動揺している素振りも見せない。
本当に、普段と何ら変わらない様子だ。


由佳の胸が、チクンと痛む。


あんなことがあったのに、小野寺薫は何とも思ってないのかな――…。


由佳は自分ばかりが必死になっているように思えて、なんだか虚しかった。


少しぐらい何か思って欲しかったが、薫の様子を見る感じだと、昨日のことなど全く気にしていない様子だ。