由佳は全速力で家まで帰ると、息を切らしながら玄関の扉を閉めた。

そして肩で息をしながら、玄関の扉によろよろともたれ掛かった。


「何てことを…」


由佳はさっき自分がしたことを思い返して、放心状態になった。

薫のために作ったチョコを、和也に渡してしまった。

それも薫が見ている目の前でだ。


「どうしよう、小野寺薫に変な勘違いされたら…」


由佳は頭を抱えた。

本当に、とっさの思いつきだった。
自分でも今思えば、どうしてそんなことをしてしまったのだろうと思った。

だがその時は、由佳はとても動揺していた。

薫が女の子に告白されていた。

あの子はきっと、薫のことが相当好きだったに違いない。
そして緊張の中、勇気を振り絞って薫に想いを伝えたのだろう。

あの時の女の子の表情を見て、由佳はそう思った。