「これ、受け取ってください…」


そう言って震える手で手作りのチョコを手渡した女の子の目には、涙が滲んでいた。

きっと彼女の様子からして、相当勇気を振り絞ったのだろう。


ズキン――


由佳はその姿を見て、激しく胸が痛むのが分かった。



その時だった。


「あっれー?笠原、まだ学校居たの?」


背後から突然声を掛けられ、由佳は心臓が止まりそうになった。

振り返るとそこには、和也の姿があった。


「シーッ!」


だが、由佳がそう言った時にはもう遅かった。

由佳が薫と女の子のほうを見ると、2人とも和也の声に気付いてこちらに視線を向けていた。

だが和也はそれに気付かず、由佳が手に持っている手作りチョコを指差して言った。


「あ!お前、それ…」


その時、何を思ったのか由佳はとっさにそれを和也につき出した。