そして由佳はいつの間にか教室に1人になっていた。

手の中には、昨日薫のために作ったチョコがある。

薫が帰って来たら、勇気を出して渡そうと準備していたのだ。

だがもう薫を待ち続けて1時間近くになる今でも、薫は一向に帰ってくる気配を見せない。


「そのまま帰っちゃったのかな…」


由佳は呟いた。

由佳は寂しさと悔しさが込み上げてきて、鼻の奥あたりがツンとした。


「もう、帰ろ…」


由佳はそう呟いて、立ち上がった。

そしてとぼとぼと歩きながら、教室を後にする。


由佳は自分が情けなかった。
きっと渡すチャンスはいくらでもあったはずなのに、勇気が出せなかったせいで結局渡せなかったのだ。


明日、華代と奈津子にまた呆れた顔をされるんだろうなと思うと、由佳は気が重かった。