結局チョコを渡せないまま、由佳は放課後を迎えてしまった。

由佳はいつも薫と下校する。

別に約束しているわけではないが、自然とそういう風になっていた。


帰り道に渡そうかな――…。


そう思って薫のもとに向かおうとするが、薫が他のクラスの女子にちょうど声をかけられていたので、由佳は足を止めた。


後ろで大きなため息をつく音が聞こえた。


由佳が振り返ると、華代と奈津子が呆れた顔で由佳のことを眺めていた。


「ここまでのヘタレ、なかなか居ないよ。」


奈津子の言葉に、由佳はむすっとしながら答える。


「帰り道に渡すもん…。」


だが10分待っても20分待っても、呼び出された薫は戻って来なかった。

教室からはどんどん生徒が居なくなり、華代と奈津子も痺れを切らして呆れながら帰ってしまった。