由佳はその日は1日、授業など上の空だった。


いつ薫にチョコを渡そうかと、そればかり考えていたのだ。

隙あらばと渡すタイミングを見計らっていたが、休み時間になると薫は女子に呼び出されて教室の外へ行ってしまうので、由佳が出る幕などまるで無かった。


由佳は大きなため息をついた。


何だか突然薫がとても遠い存在に思えて仕方がなかった。

手の届かない芸能人を見るような、そんな感覚だった。


薫を好きな女子は由佳以外にも山ほど居る。

そう考えると、由佳は自分に薫の隣を歩く資格なんてあるのだろうか、と思えた。


「なんだか、寂しいな…」


由佳の胸がチクチクと痛んだ。