「なぁ、笠原…」
突然薫に声を掛けられ、由佳はビクッとする。
「何…?」
もしかして、バレンタインのこと――…?
由佳はそう思った。
薫からチョコを催促してくれたのなら、そんなにありがたい話は無い。
わざわざドギマギしながらチョコを渡す手間が省けるのだ。
「さっきから俺たちの後ろに謎の行列が出来てる。」
「…へ?」
薫にそう言われ、由佳は後ろを振り返った。
するとそこには、いつ薫にチョコを渡そうかとタイミングを見計らっている女子たちの行列が出来ていた。
きっと薫の後を付けてきたのだろう。
「あぁ…そういうことね…」
由佳は苦笑いをすると、口を開いた。
「私、先学校行ってる!華代たちに用事あるし!」
「え…おい…待てって!」
由佳は薫の言葉も無視して、小走りで学校に向かった。
背後で薫が、チャンスを待ち構えていた女子たちに捕まるのが分かった。