―――…。


バレンタイン当日。

由佳は昨日作った可愛くラッピングしたチョコレートを鞄の隅に隠すように入れると、玄関の扉の前で深呼吸をした。

由佳が扉を開けると、そこには薫がいつものように自転車に跨りながら立っている。


「おっす。」

「おはよ。」


いつものようにそう言って、由佳は薫と一緒に登校する。

薫の様子はいつもと何ら変わらない。

だが由佳は違う。
涼しい顔をする薫の隣で、由佳の鼓動はいつも以上に速く脈打っていた。

それはきっと、由佳がぎゅっと握り締めている鞄の中に入っているチョコのせいだ。


まだ渡すのは早いよね――…。


由佳はいつ渡そうかと考えを巡らしながら、ドキドキしながら薫の隣を歩く。


―― ちゃんと好きって伝えるんだよ!


昨日、華代と奈津子から散々言われた言葉が由佳の頭に何度も響いて、由佳は頭がパンクしそうだった。