アユの横を通り過ぎてあたしに勢いよく近づいてくる如月部長。
なにこのタイミングの悪さ。
あたしは内心焦りながらもいちおう応対した。
「な、なんですか?部長…あたし急いでるんですけど」
「大丈夫、僕も急いでるから。
忘れ物を渡しにきただけだよ」
「は?忘れ物…?」
すると部長はカバンの中から何やら黒い物体を取り出して……
「はい、これ僕からのプレゼント。
石田にあげたものだろ?
ちゃんと受け取ってくれよ」
「えっ?これ…!」
昨日の黒い毛糸玉だった…。
たったこれだけ渡すためにあんな大げさな……
「あ…はぁどうも……」