助手席の窓が開いて、運転席から誰かぎ顔をのぞかせる。
「ゆらちゃん。俺だよ。」
「立花さん?」
「乗って。」
「あっ、はい。」
立花さんに言われるまま、慌てて助手席のドアを開けて乗り込む。
「ごめんね。待たせちゃった?」
「いえ。あたしもいま来たばっかりです。」
「そっか。よかった。でもいま、俺のこと立花さんって呼んだ?愁でいいって言ったのに。」
「あっ、ごめんなさい。」
「まあ、そっちが呼びやすいなら、それでいいけど。」
そう言って微笑む立花さんは、仕事終わりなのか私服ではなくスーツ姿だった。
「お仕事だったんですか?」
「うん。急に打ち合わせが入っちゃって。間に合わないかもって、慌てて来たからスーツのまんまなんだ。」