「ゆら、どした?」
ずるいよ、愁くん。
こんなときに、そのぞきこむ顔と、その聞き方。
いつもやってたみたいに。
あたしは、溢れそうになる涙を、必死にこらえて笑う。
「ううん、なんでもないよ。大丈夫だよ。」
「そうか?ならいいけど。」
泣かないって決めたんだ。
愁くんが思い出してくれるまで、また好きだって言ってくれるまで、絶対泣かないんだから。
そのとき、誰かがドアをノックした。
愁くんが返事すると、原口さんと優華が入ってきた。
「よっ、愁!」
「おう、海斗か。優華ちゃんも、わざわざありがとな。」
「いえ。」
すごい笑顔で入ってくる原口さん。
軽く頭を下げて微笑む優華。
2人の顔を見たら、我慢してた涙がこぼれそうになる。
そんなあたしに、いち早く気づいてくれる優華。
「海斗、ちょっとトイレ行ってくる。ゆら、一緒行こう?」
あたしがコクンとうなづくと、優華があたしの手を引いて、素早く病室から連れ出してくれる。
「ゆら、、何かあった?」
トイレではなく、病院の中庭のベンチに座り、心配そうに聞く優華。