はっきり覚えてるわけでも、何かを思い出したわけでもない。
でも、愁くんの心の奥に、まだあたしとの思い出がちゃんと残っている気がして、、
無くなってしまったわけじゃなくて、すごく深い奥の方に、隠れてしまっているだけなんだ。
そんな感じがして、すごく嬉しかった。
でも、、愁くんの次の言葉で、、
「そういえば、香織も、かすみ草が好きだって言ってたな。」
あたしの暖かくなった心は、、
一気に冷たく凍りついた。
愁くん、香織って呼んでるんだね。
そんなに仲良くなったの?
香織さんもかすみ草が好き?
あたしと愁くんの思い出に、香織さんが入り込んでくるようで、あまり良い気がしなかった。
「そうなんだ。香織さんと、仲良いんだね。」
「ん?そう?普通だよ。」
そう言って微笑む愁くんの表情が、どこかはにかんでいるように見えて、、
あたしの胸は、ぎゅーっと締めつけられる。
「香織もさ、俺と同じくらいの時期に、交通事故に遭ったみたいなんだ。それに、歳も1つしか違わなくて、だからなのか、なんか話が合うんだよな。」
やだ、、
やだよ、、愁くん。
そんな顔して、香織さんの話しないで。
そんな顔、、香織さんに惹かれているって、にじみ出てるよ、、。
「ゆら?」
何も言わないあたしの顔を、のぞきこむように見る愁くん。