香織さんを見送り、愁くんと病室に入る。



愁くんがベッドに移動するのに、車イスを支えて手を貸す。





「さんきゅ。情けないな、俺。」


「そんなことないよ。」



最近の愁くんは、なかなか戻らない体に、少し焦りを感じているみたいだった。




「大丈夫だよ、焦らなくても。愁くんは十分頑張ってるし、先生も、驚異的な回復力だって言ってたよ。」


「ん。なんか、ゆらに大丈夫って言われると、本当に大丈夫な気がしてくる。」



愁くんは、そんな嬉しい言葉をくれる。



そこに特別な感情がなくても、いまのあたしにはすごく嬉しい。





「あ、今日お花買ったきたの!もう春だから、お花がすごくきれいなんだよ〜。」



あたしがそう言って、買ってきたお花を花瓶に移し、ベッドわきの棚に置くと、、




「かすみ草、、」


「えっ?」



愁くんが、花束に入っていたかすみ草に反応を示した。



もしかして、、


もしかして、覚えてるの?


あの夢のこと。





「愁くん、かすみ草がどうかしたの?」



あたしは、はやる気持ちを必死で抑える。



「いや、、なんかわからないけど、かすみ草見たら、懐かしいっていうか、ホッとしたっていうか、、」


「そっか。」



愁くんがそう感じてくれて、あたしは嬉しくて頬が緩む。