「足りない。」
「もう無理〜!愁くんのばか〜!」
「しょうがないから我慢してあげる。」
そう言って愁くんは、あたしの手を引いて歩き出した。
それからあたしたちはバスに乗った。
紅葉のシーズン真っ只中ということもあり、バスの中は観光客で溢れかえっていた。
座れなくて立っていたら、バスはちょこちょこ揺れるし、いろんな人に押されちゃうし、フラフラしちゃって大変だった。
そんなあたしを見て、愁くんがあたしを端っこに立たせ、後ろから抱きしめるような形で立った。
「しゅ、愁くん。恥ずかしいよ。」
小声で話す。
「ゆらが危なっかしいからしょうがないだろ。」
「でも、、」
「いいから、黙って手すりつかまっとけ。」
「はい。」
愁くんの言う通り、黙って手すりにつかまる。