「ありがとう」友里恵は社交辞令で笑みを浮かべ、さらりと交わす。

「おい、ナル、他のメンバーの分は淹れてきてないのかよ」

小鳥遊がチラリと尾花に視線を向ける。

「ああ、給湯室の場所はご存知じゃなかったでしたっけ?」

ナル、と呼ばれた地味顔はケロリと答える。わざと言ってるのか、素なのか微妙なところだ。

小鳥遊は首を降って舌打ちをすると、会議室を出て行った。私も慌てて後に着いていく。

「お茶の用意をするんでしょ。手伝うわ」

「ああ、さんきゅ」

給湯室で2人並んでお茶の準備をする。

「あの赤ネクタイは新メンバー?」

私は湯飲みを戸棚から出して並べる。

「成川のこと?」私はこくりと頷く。

「あいつは雑用みたいなもん。ま、ご覧の通り、それすらままならないけど」

小鳥遊は苦笑いを浮かべ、並べられた湯飲みに急須でお茶を注いで行く。

「それにしても尾花さんって随分意地が悪いのね」

私は話しながら、小鳥遊がお盆に置いた湯飲みを茶托に載せて行く。

「今日なんて全然控えめな方だよ。薫さん達が要るからね」

「あれ以上?!完全なパワハラじゃない!」私が大きく目を見張って言うと、小鳥遊はハハっと笑う。

「まぁでも今回の事は確かに舐めてかかった俺と葛城さんが悪かったから」小鳥遊は肩をすくめた。

緊張感のない2人のやり取りを思い浮かべ、確かに、と言って目玉をぐるりと回した。

「とは言っても、あれだけみんなの前で恥じかかされたら、葛城さんも落ち込んでるだろうなあ。あとで慰めてあげてよね」