「無理やり拉致されそうになったところに小鳥遊と葛城が登場したって訳か」

尾花が机に肘を付き口元で両手を組む。

一人だけ肘掛けが着いた黒い革張りの椅子に、長い脚を組んでゆったりと座っているところがちょっと気になるところだ。

「タイミングよすぎてちょっと恥ずかしかったです」小鳥遊はてへっと笑った。

「その割には乗り乗りだったくせに」私は小鳥遊にジロリと非難の視線を送る。

「相手が火器を持っていたとしても、1人も確保することが出来なかったとはな」

失笑しながらも、尾花は背筋が凍る程冷ややかな視線をコウにむける。

「申し訳ありません」と言ってコウは頭を下げた。小鳥遊も続けて頭を下げる。

「でも、私たちが脚で纏いになったから」私が訴え出ようとするが、コウに手で制される。

「ほお、女性に庇われるとは惨めなもんだな、葛城?」

尾花は意地が悪そうに目を細めると、一層キツネに見えて来る。今にも「コーン」と鳴き出しそうだ。

「同じ失敗は二度としません」

「一度もあってはいけない事だ」

会議室が重い空気に包まれたその時、

ノックをしてお盆に湯飲みを載せた若者が会議室に入ってきた。

ヨレっとした黒いスーツに目がチカチカするような品のない赤色のネクタイをしている。

柄はエセベルサーチだ。

前髪を斜めに流しトップは立てており、髪型は今時な感じだけど目鼻立ちは極めて地味だ。

な、なんなのかしら、この子は。

地味顔の男の子は、私と友里恵にお茶を出してくれた。

「ささ、お熱いうちにどうぞ」

にっこりと友里恵に笑いかける。きっとタイプなのだろう。