「葛城さん!」小鳥遊がタイミングよく戻ってくる。

2人は低い声でニ、三言交わす。

コウは例のごとく感情の読みとれない無表情になり、小鳥遊も軽薄さが顔から消え失せてている。

友里恵は携帯を取り出して渋々デートのお断りの電話を掛け始めた。

また、あそこに行くのか

最近通い慣れてきた白い四角の建物を思い出し、げんなりする。

お迎えが来たのを知らせるかのように、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。


*****************************


常連になりつつある緑ヶ丘警察署刑事課。

今回は小狭い聴取室ではなく、会議室に通された。

細長い机が何列か並べられており、どこの会社でもあるような殺風景な造りである。

「また来たか、お嬢」田所がにやりと笑う。

いつものメンバー、コウと小鳥遊、強面の田所のおっさん、キツネ顔の尾花さんも揃い踏みだ。

前には比較的おおきなキャスター付のホワイトボードが置かれていて、汚い字で色々書き込まれている。

聡の写真もマグネットで留めてあり、そに下には「容疑者」と書かれていたものだから、思わずニヤリと笑ってしまった。

しかし、その隣にはピースサインをした間抜け面の自分の写真が貼ってあったのに気づく。

その隣に汚い字で「オキモトカオル(29)」と書かれていた。

年齢もバレバレなので剥がしてほしい。