「あれが…噂の刑事さん?もんの凄い美形じゃない…」

友里恵は信じられない、というように大きく目を見開いている。

「あ、そっち?」思わず突っ込んでしまった。

「それに刑事さんとは何もないって言ってなかった?!あんな熱く見つめあっちゃって」

「友里恵、たった今私たちは拉致されそうになってたのよ?おまけに発砲騒ぎよ。そりゃ心配するでしょう?」

「まあ、そうね。東京も物騒になったわね」

お茶の間でテレビでも見ているように呑気な口調で、友里恵からは当事者意識がまるで感じられない。

しかし、ここ最近に身の回りで起こった物騒な出来事を考えると、先程の男達も偶然に声を掛けて来たとは考えづらい。

それにあのタトゥーの男…。

恐らく私を公園で襲ったのと同一人物、だったと思う。確証はないけど。

あの粘りつくような視線を思い出し、ブルリと身震いする。

私を狙ってた?

もしコウ達が来なかったら関係者のない友里恵まで巻き込んでしまっていたかもしれない。

恐ろしい展開を想像しただけで目眩がする。

「聡の一件が絡んでるんだと思う。ごめんね、巻き込んじゃって」

「なによー、そんな強張った顔しちゃって」友里恵は私の頬っぺたを軽く摘まむ。

「ひぇ、ひぇも」

「私は怪我もしてないし、大丈夫よ。薫も次から次へと大変だね」

友里恵が私の肩に手を置いて抱き寄せる。細くて柔らかい腕に包まれると仄かにベビードールの甘い香りがした。

「じゃあ、そろそろ行くわね」友里恵は腕時計にチラリと目をやると立ち上がる。