「おねーさんたち、飲みに行こうよ」

リーダー格であろう金髪を短く刈りあげ、髭を生やした男が一歩踏み出し近付いて来る。

「人と待ち合わせしてるからやめておくわ」私は丁重にお断りする。

友里恵も無言でニッコリと微笑む。

しかし、寄るな、話しかけんな、触るなオーラが全開だ。

「そんなこと言わないでさー、ちょっと位いいでしょ」

坊主の男が隣に座り私の肩に手を回す。

胸元から首までタトゥーが彫られているのがチラリと見えて思わずギクリとする。

「私たちみたいなおばさんじゃなくてもっとギャルと飲みに行けばいいでしょー」私は男の手を払いのける。

「そんな事言わないで、付き合ってよ、おねーさん」金髪がの腕を引っ張る。

「いやよ!どうせお金もってないんでしょ!」友里恵は腕を振り払った。

嫌な理由はそこかよ、他にもあるだろ、と思わずツッコミたくなるが、そんな状況でもないのでグッと我慢する。

「あるよー金なら。だから付き合えよ」

ロン毛がマネークリップに挟んだ万札で友里恵の顔をピタピタ叩く。

「ほら立て!」私と友里恵は腕を掴まれ強引に引っ張られる。

「きゃー!ちょっと離しなさい!おまわりさーん!」

私は大声を出したが、行き交う人々は厄介事に巻き込まれたくないようで、見て見ぬ振りだ。

都会の人は冷たい。

「すぐそこに車停めてあっから」ロン毛が指差す先に黒いワンボックスカーが停まっている。

何なのこいつら。絶対おかしい。

友里恵もギャーギャー騒いでいるが、腰に手を回されて無理やり立たされる。