「逆玉狙ってる?」

コウは口に含んだビールを吹き出しそうになった。

「なんでそんな話になるんだ」

そんな動揺しているなんてきっと図星に違いない。

どうしよう、うちの父親はしがないサラリーマンで、母は図書館でパート勤務しているごく普通の家庭だ。

こればかりは私の努力ではどうにもならない。

「お金なんてね、暮らしていけるだけあるのが幸せなんだから!普通が一番よ!普通が!」

「…はぁ?」

コウは首を傾げピンと来ていない様子だった。

私の力説にもかかわらず、まだ逆玉への野望は諦めていないらしい。

だからと言って私もコウを諦めないけどね。

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「男前の刑事さんの家に居候しているとは急展開ねー」

友里恵がパープルに黒のリボンがついた、セットアップのランジェリーを当てがって鏡を覗き込む。

可愛すぎるかしら、と呟き、同じデザインのシャンパンゴールドを手に取る。

今日は珠希と友里恵とランチの後に三人でショッピングだ。

珠希が彼のために勝負下着を買い足したいと、インポートランジェリーの店へ連れて来られた。

「一つ屋根の下、と言っても色っぽい事は何もないんだけどな」私はフッと苦笑いを浮かべた。

「同棲していているのに何もないなんて、それはそれで不健全だよね。これどうかな?」

珠希はピンクのフリルがついたランジェリーを掲げて見せる。