それは、
お礼も言っていない、
彼女の手製の眼鏡入れだった。
「机の上にあったので。
外にお出かけの時は、
必ず掛けてらっしゃると聞いて。」
僕は、言葉も出ず、
彼女の話を聞くことしか出来なかった。
「あ、使って下さって、
ありがとうございます。
私、嬉しいあまり、
それをお伝えしたくてたまらなくなって。」
違うよ。
ただ、入れて置きっ放しに
してただけだ。
「…あと、
お食事途中だったと聞いたので、
詰めて参りました。
お口に合わなければ捨ててください。」
さっきから後生大事に
抱えていた風呂敷を
僕に差し出した。
僕のために
なんでこんなこと。
一生懸命、作るなよ。
受け取らなきゃ
いけないじゃないか。