エントランスに出て、
タクシーに電話をする。
山下さんは、もう自宅に帰っている
時間だったからだ。
庭を抜けて、
敷地を抜け切るころ、
ちょうどタクシーが来ていた。
「園山ホテルまで急いでください。」
浴衣姿のまま、
タクシーに乗り込みそう言った。
それから、
翠さんに電話をかける。
「もしもし?
カードキー忘れたんだけど、
部屋に入れる?
あと、明後日返すから、
タクシー代立て替えてくれませんか?」
僕がそう言うと、
「分かったー。
フロントに言っとくから。
何?女の子連れ込むの?」
と翠さんが言った。
僕は、返事をせず
電話を切って、
背もたれに盛大にもたれ、
頭を抱えた。