桜子さんは、
ぐっと唇を噛んで
泣くのを堪えているように見えた。

可哀想だが、
僕と一緒になるよりも
ずっとマシなはずだ。

僕がしてやれるのは、
出来るだけ、
早く愛想を尽かされるよう
嫌われることをするだけだ。


やっと見つけた糸口に
多少安堵した。


しかし、
彼女の顔を見ると、
今にも心が折れそうになる。

僕は彼女を一度も見ずに、
離れを後にした。