「普通ってなんだろうね。
私も普通じゃないからわかんないや。」
詩子さんは言った。
「そうだね。普通じゃない人しか
この世にはいないのかもね。
だからこそ、みんな普通を求めるのかも。
で、僕はともかく、
シュウくんは違うでしょう?
翠さんに優しいでしょ。」
僕は話を戻した。
「何言ってるの?
りっくんなんて可愛いもんよ!」
急に詩子さんが笑い出さした。
「え?なんで?」
「蛇の生殺しもいいとこよ。
知ってる?
あいつね。あの家に一度も翠って子を
あげたことないのよ。
私は会ったばかりでエッチしたのに、
情けないよねー。」
詩子さんはしーっと人差し指を掲げた。
え。
今、すごいことさらりと言わなかった?
「りっくん、毎日来てて変に思わないの?
婚約者と一回でも会った?」
その詩子さんのことは
今ちょっっと置いといて!
確かに一度も翠さんは家に来ていない。
「る、留守中だからじゃないの?」
僕はひらめいたように聞いた。
「帰って来てるかもしれないじゃない。
帰って来てないことを知ってるのは私たちだけよ。」
そう詩子さんは返した。