「もう僕のことは諦めたんですかね。」

僕は本音をこぼした。

というか、もともと決められた者同士、
恋愛ではなかったのかもしれない。


「そうかもね。
ここまで冷たくされたら、
大概の子はさ、諦めちゃうよね。

ねぇ、なんで、
りっくんもシュウもそんなに好きな子に
ひどいことばっかするの?」

詩子さんは、マンゴージュースを
飲み干した。


「僕は…」

言いかけて、
テラスから見える町を見回した。


どこもかしこもカップルだ。



みんな何を考えてここにいるのだろう。
全然分からない。


みんなどうやって恋をしてるんだろう。
こうしてご飯を食べたり、
映画を見たり、
手をつないだり、
まるで、永遠続きそうに見える。


僕らにあれは手に届かない。


こんなに町中に溢れているのに。



ただ、幸せそうな笑顔を浮かべているのを
じっと見た。


「そうですね。
普通じゃないからじゃないですか。」


僕はそう言うしかなかった。



彼女のためじゃない。

自分が傷つかないためだ。