「…というわけで、
彼女は来ないんだ。」
僕は詩子さんにそう言った。
「残念そうね。」
詩子さんはからかうように言った。
「そりゃあ、最後の三行半ですからね。
決定打を打てなくて絶好の機会を逃しました。
また、別の機会を考えなくては。」
僕はカフェのコーヒーをすすった。
こんな昼間から町中に出るのは、
中学生以来だ。
「じゃなくって。
純粋に彼女とこういうことをしたかったでしょう?」
詩子さんは意地悪な笑顔を浮かべた。
言い返してやろうと思ったが、
図星であることが分かってしまうので、
黙って頭を掻いた。
どうなんだろう。
彼女とファーストフード店になんか行ったら、
どんなことからまず驚いたのかなぁ。
なんて彼女のことを考えた。