「早乙女さん待って!」

佐藤くんが追いかけてくるのが分かった。

それでも私は走るのを止めずひたすら走った。

今は誰もいない所に行きたい。その思いだけで。

辺りはすっかり暗くなり走る先に公園が見えてきた。

私は公園の中を走り人気のない遊具の中に身を潜めた。

ここなら誰もいない。きっと佐藤くんも諦めて帰ってくれたよね。

一人になりほっとしたらまた涙が溢れてきた。私は顔を膝につけ声を殺して泣いた。

佐藤くんに嫌われちゃったよー。

今日1日がまるで夢のようだった。本当に楽しくてそれなのに今の私はまるで捨てられた猫のよう。



「ほのか!」

誰?私を名前で呼ぶのは?

泣きながら顔を上げて声のするほうを見ると次の瞬間。

ギュッ


力強く抱き締められていた。


「ごめん、ほのか。」

抱き締めている力強さとは逆に声は弱々しくていまにも消えてしまいそうだった。

誰?

あー、誰だか分からない人に抱き締められてるのになんて安心するんだろう。

「頼むからもう逃げないでくれ。」

逃げる?誰から?貴方から?私が?


「うん。」

誰だかわからない人に私は頷いていた。