「まぁ仕方ないですよ。皆藤刑事も謝ってたじゃないですか」
優衣ちゃんがお兄ちゃんをなだめる。
しかし言い終わってすぐにくしゃみ。
「ちょっと優衣ちゃん。風邪ひいたんじゃない?」
「いえ、全然だいじょ……わっ」
バサッと優衣ちゃんの頭にタオルを被せたのは、お兄ちゃん。
お兄ちゃんはタオル越しに優衣ちゃんの頭を撫で回した。
「ちょっと!何するんですか!髪がボサボサに……」
「俺いらないから使え」
『俺いらないから、これ使えよ』
遠い日の思い出が蘇る。
どしゃ降りの雨の音に、香りに、差し出された傘。
「ありがとう……ございます」
「ん。じゃ、俺ちょっと寝るから」