「ほらっ、乗って?」

「お、お願いします」

「あれ、もしかして、2人乗り初めてな感じ?」

「まあ…数年ぶりっていうか、ブランクがあるっていうか…」

「ああ、そっか。よしっ、しゅっぱーつ!」

シャー…

先輩は、力強く、なめらかに自転車を動かす。

夜の少し冷たい風が、髪をなびかせる。

「日向ちゃん」

「はい?」

「現状、大丈夫?」

「へ?」

「…前、泣いてたやつ。」

「ああ、それか。大丈夫ですっ」

「そう?いつでも呼んでくれれば行くからね」

「あはっ、じゃあ呼んじゃおうかな」

「うん、無理だけはしないでね」

「ありがとう、先輩」

「いーえっ」