「失礼しまーす」

「柴田先生、夕は今どこにいるんですか?」

柴田先生とは、私の担任の男の先生だ。

「……」

「教えて下さい」

「……」

「お願いします」

「……」

「夕に会いたいんです‼︎‼︎‼︎お願いします‼︎‼︎‼︎」

私の声が、放課後の職員室に響く。

深く頭を下げる。

「…広瀬は今、市民病院で入院している。」

「どうしてっ…?いつもは元気じゃないですか⁉︎」

「生まれつきの病気なんだ。時々休んでいたのも、そのせいだ。」

ドクン、と心臓が不穏な音を立てた。

「…そう、ですか…ありがとうございました。」

「見舞いに行くなら、バスの方がいいぞ」

「…はい」

「失礼しました…」

私は、大きなケガも病気も、したことがない。

夕は、色々なものを抱えてるのに私は、傷付けてしまった。

「バカだ、私」

日が沈みかけていたけど、構わず走り出した。