ーーーーーー「今日で最後かーーーー…」

「日向ちゃん…」

「ん?」

「…行かないで」

弱々しいひいくんの声が、かすれて消える。

飛行機雲が、消えていく。

「おととい約束したし、昨日もいっぱい遊んだじゃん?」

「日向ちゃん、帰っちゃだめ…」

私の首筋に、ひいくんの顔が埋められる。

「ひいくん…」

◇◇◇◇

日が傾いた頃、私はばあちゃんの家を出ようとしていた。

ばあちゃんの家を出て、海のところまで歩いたとき。

「日向ちゃんっ‼︎‼︎‼︎‼︎」

ひいくんの声が、波の音の中に聞こえる。

「ひいくんっ?」

「日向ちゃん…告白の返事、聞いてない」

「…そうだね」

「日向ちゃん、俺のこと、好きだったら…ここにいて…」

ひいくんの腕が、私の背中に回される。

私はゆっくりと、その手を解く。

「ひいくん。私を、待ってる人がいるの。だから、帰んなきゃ」

「そっ、か…」

ひいくんの腕が、力無くだらんと垂れる。

「でもっ!…ひいくんは、私の大事な大事な幼なじみだよ!絶対、また来るから!」

「うん、また今度ね」

「また今度」

軽く手を振ってから、また歩き出す。

風が、強く吹いた。