「もういい。日向、行くぞ」

「ちょっ…中島!」

弘樹くんが叫んだけれど、圭は私の手を引いて走り出した。

「圭っ、圭!」

「あ、…ごめん」

「どうしたの?弘樹くんは?」

「…今日は俺と、約束してたんだろ。」

「そうだけど…」

「アイツには、渡さねえから。」

「なんで…?」

「アイツには、渡せない。日向が、心配だから…」

「……?」

「行こう、花火始まる」

グイッと手を強引に引かれる。

「痛いよ、離して」

「嫌だ。絶対、離さねえ」

ドォ、ンーーーー!!!

「花火…」

「始まった…」

「圭」

この声…

「夕…」

圭は戸惑っている。

「圭、そこで何してるの…?日向と」

「あー、俺ら一緒に来てて…」

「日向と…?なんでよ!私、誘ったじゃん!断ったくせに!」

「ごめん…」

「日向。」

「ゆ、…夕…」

ーーーバシッ。

「痛っ…」

夕が私のほっぺたを、引っぱたいた。

「おい、夕!日向に手ぇ出すな!」

「ねえ、圭?日向と、付き合ってるの?」

「まだ、付き合ってない」

「“まだ”って何!?日向にその気があるってこと!?」

「…夕。お願いだよ…もう俺達に構わないでくれ…」

「…」

夕は私をジロリと睨んで、人混みへ消えていった。

「日向の……裏切り者…っ」