「―――それで私、また船に乗って『初心者島』に行って、その知り合いらしい漁師に話しかけたんだけど、もしかしたらあいつは神木を見に行ったんじゃないかって言われて、島の中心の神木がある森に行ったのね」

「たしか桟橋から神木まではすごい近かったわよね?でも、神木のある森にはシャテラリア国の兵士が立っていて、ミッション2をクリアしてないとは入れてもらえないはず」

「うんうん。それで私、やっと神木までたどり着いたんだけど、神木だと思っていた大木がいきなり動き出して私を攻撃してきたの!倒されたくなかったからからくり人形のアルメェールを召喚して必死に戦って、もうぎりぎりで倒せたんだけど―――」

「初戦で倒せるなんて、ユイ、相当プレイヤースキル(キャラクターを操作するリアルの人間の能力)高いのね」

「レベル上げしまくってたから手が慣れてたのかも(笑)それでね、倒したらその神木紛いの敵の体に航海日誌の切れ端がついてて、言葉を拾うように読んでいったら、その捜してた男はどうやら彼女に神木の葉をプレゼントしようとしてたらしいの。その葉があれば、幸せな家庭が築けるってジンクスが漁師の間にはあったらしくて」

 倒れた敵の体を乗り越えた先に、本物の神木を発見し、ユイはその葉と日誌を持ってクエストを依頼した港町の女の元を再び訪れた。

 日誌の切れ端と神木の葉を女に渡すと、張り詰めていた糸が切れるように女は泣きくずれた。

 翌日再び桟橋を訪れると、いつものように船着場のすぐそばで遠くの海を見つめながら女が立っている。女は近づいてきたユイに気がつくと、すっきりとした表情でこう言った。