アキス王は神官たちに合図を送る。

「これから太陽を呼ぶ儀式を始めます。この地を訪れる機会はそうないでしょうから、どうぞ、儀式を見学していってください」

「あっ、あの、そのことなのですが」

　ユイは太陽王にまっすぐな視線を向ける。

「あそこにいる私のフレが、今日で引退するんです。彼は『オートマトン -Online-』の象徴でもあるアキス王様がいるこの丘を、最後にログアウトする場所と決めているようなんです。きっと儀式が終って世界に朝がやってきたら、彼は永遠にログアウトしたまま、もう２度と太陽神界で彼に会うことはできません。だから、できるだけゆっくり……いつもよりもすばらしい儀式にしてください！」

　太陽王が古墳の上で待つアレキサンダーに視線を投げる。

「あれは、初心者警備隊ギルドの隊長……、そうですか。彼が引退するのですね」

　ユイが「彼の事をご存知なのですか？」と問いかけようとしたとき、神官の１人が「時間です」と太陽王に儀式の始まりを告げた。

　アキス王は神官にうなずいてからユイに微笑みかけた。

　ユイはゆっくりと後ずさる。

　神官たちが次々にランプの明かりを消していくので、ユイはアレキサンダーの下へまっすぐ走し出した。

　息を切らしながらアレキサンダーのとなりに立つと、アキス王が最後のランプの明かりを消した。

　夜の闇は一気に丘を侵食した。