ユイたちは地上の明かりを目指して走った。

 古墳に入る前はあれほど弱く感じていた月明かりを、出口の向こうに発見したとき、それは信じられないほど明るく感じられた。

 飛び出すように外界に出る。

 神聖不可侵、昔、太陽神が世界に降り立ち、国王に太陽を呼ぶオカリナを与えたと言われている丘が、まさに目の前にあった。

 ユイは夜気を胸いっぱい吸い込んでみた。案の定、冷たい風は鼻腔に痛い。

太陽神界は1日の中で夜明け前の刻が一番冷え込む。

 太陽がもっとも遠く離れているためだ。

 ユイはアレキサンダーと同じように、丘の中心を見据えた。

 そこではまさに太陽王が儀式を始めようとしていた。

 6人の神官たちは太陽王の周りで六芒星を形取るように立ち、太陽王の合図を待っている。

 ふと、静かに見守っているユイたちに太陽王が気づき、こちらに向かって丁寧に頭を下げた。

「行ってきな」

 アレキサンダーはユイの背を押す。

 ユイはアレキサンダーを振り返りながら口を開く。

「私だけ?」

「俺はこのミッション、もう終ってるから」

 ユイは太陽王に再び視線を戻す。

「驚くぞ」

 アレキサンダーがユイの背に投げた言葉の意味が分からないまま、ユイは太陽王の元へ走り出した。

 月明かりと神官たちが手に持つランプの明かりで、太陽王の姿をとらえる。

 ユイは太陽王のそばまで来ると自然とひざを折り、頭を下げた。

「どうやら地下の道から来られたようですね」

 その声を聞いてユイははっとして顔を上げた。