帆船の甲板の上、中天の太陽の陽光を浴びながら、海を見据えているユイとアレキサンダーが写っている。

「これって、なんだかいい雰囲気なんじゃない?」

 下から見上げたような角度で撮影されたそれは、たしかに洋子の言う雰囲気に見えなくもない。2人とも後姿なので表情はまったく分からないが。

「この人ね、あと1ヶ月で引退しちゃうんだ」

「そうなんだ、残念だね」

 あくまでゲームのキャラクターという認識が強かったユイだが、一夜明け、フレの捉え方がすっかり変わってしまっていた。

 ゲームのキャラはいなくならない。

 電源を入れれば必ずそこにいるのに。

『わたし、一ヶ月入れなくなったの』

『一ヶ月したら辞めないといけないんだ』

 結衣の脳が勝手に声が再生する。

 ふぅ、とため息をはきそうになって、結衣は慌てて飲み込んだ。

 落ち込むことじゃない。

 これでいいんだよね。

『別れが悲しいと思える人に出会えることが、このゲームの価値だと、俺は―――』

「―――わたしも、そう思う」

「ん?」

 独り言に反応した洋子に、結衣は目を少し寂しげに細める。

 そして「なんでもない」と複雑な表情で微笑んだ。