「漠然とは、いつか辞めるんだろうなって分かってはいたけど……こんなに突然だとは思わなかった」

「ごめん」

 ユイは首を横に振る。

「別に謝ることじゃなくて。―――私、たった今さっき、アレキサンダーさんとこれからやりたいこと、いっぱい思い描き始めたとこだったから」

 ユイが何を言ってもアレキサンダーの意思は変えられないことは、ユイも分かっていた。だからなおのこと気持ちのやり場が無い。

「どうしよう、なんか泣けてきちゃった」

「……ありがとう」

 アレキサンダーはユイの気持ちをくんで口を開いた。

「俺は、この『オートマトン』をはじめてもう1年になるから、その間にフレがやめて会えなくなることがけっこうあったんだ。その中でも特によく遊んで、かなり深い話までしたフレが引退したときはけっこうきつかったよ」

 長身のアレキサンダーが整った表情でユイを見下ろしている。どうしてこうも、太陽神界にいるプレイヤーの顔は美形ぞろいなのだろう。

 アレキサンダーの透けるような鳶色の瞳は朝日を受けて一瞬光ったように見えた。本当に生きている人間と接しているような気持ちになってくる。

「―――別れが悲しいと思える人と出会えることが、このゲームの本当の価値だと、俺はそう思ってる。キャスケが戻ってくるまで後1ヶ月、明日を生きる糧となるぐらいの、楽しい思い出をたくさん作ろうな」

 アレキサンダーはユイに、にやりと笑った。