「え?キャスケットさん、今日は何時までなの?」

「あと十数分」

「な!?」

「電話のせいか」

「もう、本当にごめん」

「どうする?あと十数分釣りまくるか?(笑)」

「じつは今日は2人を会わせたのにはわけがあってね、わたし突然なんだけど明日から1ヶ月ぐらい『オートマトン』に入れないの。だからアレくんにユイのこと頼もうかと思って」

「ぬ?!」

「ええええええええ!!!」

 アレキサンダーとユイは、リアルで何があったの、という言葉を寸前で飲み込んだ。

 それがお互いの空気でわかり、目が合った瞬間苦笑しあう。

 リアルのことは本人がいい出さない限り、聞かないのが鉄則である。

「アレくん、お願いできるかな。まだユイ、PKに狙われるレベルだから」

「俺は別にかまわないけど」

 アレキサンダーは一瞬考え込んだような間を置いてから、ゆっくりと話し出した。

「こんなときになんなんだけど。俺さ、もう少ししたらオートマトン引退するつもりだったんだ、来月から仕事が忙しくなるから。予定では今月でやめるつもりだったんだけど、そういうことなら最後のアレキサンダーの使命として、キャスケが帰ってくるまでここにいるよ」

「―――」

「――――」

 アレキサンダーの言葉を聞いたユイとキャスケットは、微動だにしない。

「ん?……2人とも聞いてるか?」