「やっほー」

 見ればキャスケットがにっこり笑って船室から出てきた。

「ごめんね、誘った私が遅れまくって」

 そう言いながらユイたちのもとへ駆け寄ってくる。

「おまたせ」

「電話もういいのか?」

「うん、ほんとごめんね」

「ううん。キャスケットさん見てみて、これ。いま取ったミスリルの塊から、アレキサンダーさんがピアス作ってくれたの」

「おお、きれいね」

 ユイとキャスケットがにっこり笑った。

「なんだが、2人とも昔からの友人みたいに見える」

 アレキサンダーが2人を見て言うと、ユイとキャスケットは照れたように微笑んだ。

「なんでだろうね」

「ついこの間フレになったばかりなのにね」

「おかしいよな、リアルの距離は遠いのに、太陽神界での距離はすごく近い」

「ふしぎね」

「そういえば、今日大学でね、キャスケットさんの話をしたの」

「わたしの?」

「うん、リアルフレに私とキャスケットさんがステキな関係なんだってことを言いたかったんだけど、すごく伝えにくかった。『オートマトン』をやってなくて、実際こういうやり取りを見ていない人に伝えるのって難しくて。みんな、本名知らないのに親しいってことに違和感を感じるみたいで」

「ああ、それはあるかもね。実際、私たちはいま同じ甲板にいるけど、客観的に考えたら、別々の場所にリアルの体がある。いわば、意識だけでお互い遊んでるってだけで、外から見たら、やっぱりリアリティーに欠けるのよ」

「意識だけか、まあ、そうとも言えるかもな。プレイヤーの数の意識だけが『オートマトン』の太陽神界っていう世界を動かしている。太陽神界で確実にこの瞬間、俺たちは生きていて、競売やバザーのような物流もあって、社会が成り立っている」

 アレキサンダーはユイの足元で、物言わずにたたずんでいるからくり人形を見て言う。

「そうなると、俺たちが操っているこのキャラクター、それ自体がオートマトン(からくり人形)で、この太陽神界は俺たちリアルの人間が操るからくり人形が暮らす世界とも言えるかもしれない」

「なるほどぉ」

「アレくん、深いわね(笑)―――あああ!時間がないんだったわ」