「ミスリルの塊だった」

 それは不思議な黄緑色をして、アレキサンダーの手の中で朝日をうけて鈍く光っている。

「高いんですか?」

「まあまあかな。普通はこれを装備品に加工してから売る。その方が高く売れるんだよ」

「加工?」

「各プレイヤーは1つだけスキルを選べるんだ。素材から装備品を作るスキル、料理を作るスキル、アクセサリーを作るスキル」

「ふむふむ」

「これ使っていいなら、見せてあげるけど?」

「ぜひ」

 ユイはアレキサンダーの手元を覗き込んだ。

 アレキサンダーがミスリルを両手で持ったまま、意識を集中するとミスリルが徐々に変形しはじめた。

「うわぁ…」

 手の中の光が強くなって、1度はじけたような音がした。

「ほら」

 アレキサンダーが開いた手のひらに、シンプルなミスリルのピアスが乗っていた。

「このピアスを土台にして、宝石とか貝殻とか自分の好きなものをさらに付け加えることもできる。まあ、それもスキルが必要なんだが。面白いだろ?ユイさんも上げてみたら?そのほうがGoldも稼ぎやすくなるし」

「いますぐ上げたくなってきた(笑)選べるスキルは1つだけなんですよね?」

「ああ、装備品か料理かアクセサリー」

「悩むぅ」

「ほら。あげるよ、これ」

 アレキサンダーがユイにミスリルピアスを手渡した。

「いらなかったら、売っちゃって」

「ありがとう!」

 ユイが手の中のピアスの感触を楽しんでいると、聞きなれた声が聞こえてきた。