太陽神界に生まれたての太陽が顔をのぞかせると、世界は一瞬にして明るくなった。

 ユイが桟橋についたばかりの船に乗り込むと、数人のプレイヤーも騎士の靴をカシャカシャと鳴らしながら乗り込んできた。

 初心者エリアの島に向かう小さな帆船だ。

 あと数分で出航する。

 狭い甲板から海を眺めながら、ユイは思い出したように、頭に装備していた防御力が比較的高いレザーヘルメットを素早くはずした。

 鼻歌交じりでトレジャーバックからルビーのかんざしを取り出し、それを装着する。

「ユイさん?」

 背後から遠慮がちに声をかけてきたのは、アレキサンダーだった。

「こんばんは」

「こんばんは、お久しぶりですっ」

 挨拶は太陽神界の時間ではなく、リアルの時間で言うのが決まりだ。

 振り向いたユイの髪にかんざしを見つけて、アレキサンダーは困ったように口を開いた。

「そのかんざし、よみがえりの魔法がもう切れてるみたいだね」

「そうなんです。でも、魔法が使えなくても、これはキャスケットさんに初めてもらった私のお守りだから」

 嬉しそうに笑うユイにアレキサンダーもにやりと笑う。

 同じように甲板で船の出港を待つ他のプレイヤーが、全身を鎧で包んだ重装備なのに対し、アレキサンダーはベージュのフードが背中にたれた、楽そうな緑のダブレットを着ている。

「あの、キャスケットさんは?」