「じゃあ、専門資料室行って発表の資料、コピーしないといけないし、そろそろ行こうかな」

 美香の言葉にそれぞれが立ち上がる。

「私も」

 洋子は重そうなリュックをごそごそと背負って、体についた草を払う。

 春奈は結衣に微笑みかける。

「3限でね」

「うん」

 結衣が3人に手を振っていると、祥平が結衣の元にやってきた。

「なんだよ、みんな俺を見るなり解散しやがって。ハーレムしたかったのに、結衣、何で止めないんだよ」

 先に網がついたラクロスでつかうクロスという棒を肩にかけたジャージ姿の祥平が残念そうに顔をゆがめた。相変わらずの背の高さに圧倒される。

「すごい汗」

「かっこいいだろ?」

 自信満々の笑みを浮かべ、祥平は結衣を見下ろした。

「うーん、かっこいいのかもしれないけど、4年も前から見てるから」

「慣れた?」

 祥平は胡坐でどかっと芝生に座ると、結衣の手を掴んで無理やり隣に座らせた。

「―――」

「どうしたの?」

「最近、電話かけても出ないよな」

「うーん、ごめん、あの時間帯って忙しくて」

「夜中に忙しいのか?」

 結衣がどう話そうか迷っていると、祥平が代わりに口を開いた。

「回りくどいのめんどくさいから疑問に思ってるまま聞くけど、俺ともう別れたいのか?」