「ついてきて」

 キャスケットとユイは二人を見送ってから、火山の入り口にポッカリと開いた洞窟に入っていった。

 真っ黒な岩肌がゴツゴツとして、頭をぶつけたらとても痛そうだ。

「すぐにつくから」

 ユイはキャスケットの背中に隠れながら、オートマトンと薄暗い洞窟を進んでいく。

「私たちがさっきいたジャングルからここに来るまで徒歩だと地球時間で30分はかかるのよ」

「そんなに?!」

「この太陽神界はほんとうに広いの。でもそれに気づいたのは始めてから2ヶ月もたった後だったから、キャラクターを作り直す気にもなれなくて。便利よね、攻撃魔道士は。ユイも変えるなら今よ」

 キャスケットを見失ったら確実に迷いそうなほど、なんの特徴も無い暗い洞窟を、何度も曲がりながら進んでいく。確実に分かるのは、ひたすら地下のほうへ歩いているということだけ。

「うーん、わたしは、キャラクターを変える気は今のところないけど、変えるなら回復魔道士がいいかな。実はね、港町を出たところで、この3日間ずっと1人でレベル上げしてたんだけど、何度かプレイヤーに「回復してもらえませんか?」って声かけられたの。でも回復の魔法、わたし使えないし、回復アイテムもそんなに買えないから、ぜんぜん役に立てなくて」

 ユイがそう答え、前のキャスケットに習って1度頭を下げて岩をよけると、キャスケットの背中越しにまばゆい光であふれた空間が見えた。

 キャスケットが立ち止まってユイを振り返る。

 鉱石の瞬く青白い光を全身に受けるキャスケットは、妖しく微笑みながら言った。

「ようこそ、私の秘密の場所へ」