ユイはコロナタの動かなくなった体から視線を上げた。

 気がつけば戦場に喝采があふれていた。

 さきほどまでユイたちを取り巻いていた冷たい視線のプレイヤーたちはすっかり姿を消していて、戦いのうさわを聞きつけた港町にいた一般のプレイヤーたちが知らぬ間に戦いを観戦していたようだ。

 そういえば途中から私たちを応援するような声が何度も聞こえていた気がする。

「みんなは?」とユイが振り返ると、キャスケットとそのフレ2人は慣れた様子で、プレイヤーたちの賞賛に手を振り返したり、優雅に礼を返したりしていた。

 ルークは初めて送られただろう喝采に対して、照れた様子でそっぽを向いている。

 喝采を送るプレイヤーの中にいた善意の回復魔道士たちは、一通り賞賛し終えた後に、広場の周りで倒されたままのプレイヤーたちを蘇らせはじめた。

「ユイ」

 キャスケットが2人を従えて、ユイの傍らに立った。

「ごめんね、とんでもないことになっちゃって」

「ううん、勝ててよかった……というか、ほんとうに、まだドキドキしてて、手が震えてる」

「怖かった?」

「怖かったし、楽しかったし、ドキドキしてワクワクして、ああ、なんかもう」

 キャスケットは頬を上気させているユイの目の前に両手を差し出した。

「これ、コロナタから出た戦利品。ユイに受け取って欲しいの」

 キャスケットの手には煌びやかな飾りのついた細い革ひものネックレスがのっていた。美しい彫り込みがされた飾りの金色の輪には、さらにピンク色のキラキラする宝石と金色の小さな鍵がシャラシャラとついていた。

「このネックレスには『コロナタの首飾り』っていう名前がついてるのよ」

 攻撃魔道士がそう言うと次に狩人が口を開いた。

「俺たちは救援に来ただけだから、君がもらうといい」

「で、でもルークは?」

「ああ、あのPKならなんだか知らないけど、いらないって。いまさっきログアウトしたみたいよ?」

 キャスケットのあっけらかんとした言葉にユイはいぶかしげに眉をひそめた。

「なんで?ルークの目的って戦利品だったのに」